※報告レジュメです。注は次の記事へ、資料は省略しました。
稚内 憲法を学ぶ会 第37回学習交流会
震災がれき受け入れを考える
−本当に必要か、本当に安全か−
2012年4月6日
稚内北星学園大学 斉藤吉広
<目次>
はじめに : 受け入れに反対するのは「非国民」?
1. がれきの受け入れは「必要」か : 「復興支援」=がれきの受け入れ?
(1) がれきの実態
(2) 広域処理の必要性?
(3) 利権としての広域処理
(4) 必要な支援は何か
2. がれきの受け入れは「安全」か : 「国の基準」を満たせば安心?
(1) どこがどれだけ汚染しているのか
(2) 国の基準
(3) 自治体の対応・住民の反応
おわりに : 事故責任と放射能を拡散させないために
○ がれき処理が復興のメインテーマなのではない
○ いがみ合うのは、相手の思うつぼ
○ 福島の引き続く危機と、東電や原子力ムラの責任を忘れない
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はじめに : 受け入れに反対するのは「非国民」?
「広域処理で国は一歩も二歩も前に出て行かなければならない。日本人の国民性が試されている」(野田佳彦首相、2012年3月11日、記者会見)
1「瓦礫の処理を受け入れる日本の絆を世界に発信しましょう」(黒岩祐治神奈川県知事、2012年3月18日、川崎市街頭演説)
2「被災地からのがれきを地方が受け入れないことは、被災地を切り捨てることである」(細野豪志環境相、2012年3月11日、フジテレビ「新報道2001」)
3(被災地での処理施設整備への財政支援を提案した市議に対し)「金だけ出して世界からバカにされた湾岸戦争の屈辱を思い出す。本当に日本は情けない国になった」(橋下徹大阪市長、2012年2月22日、大阪市議会)
4「きみたちはどこの国に生きているんだ。県市町村、全部が合わさって日本という国家じゃないのか。それでも日本人か、恥を知れ」「心配してますと口にしても、あなたがたが選んだ首長ががれきを拒否しているんだ」(伊集院静、2012年3月2日、新聞インタビュー)
5「東北がんばれ!!それってただ言葉だけだったのか?東北の瓦礫は今だ5%しか処理されていない。東京、山形県を除く日本全国の道府県そして市民が瓦礫搬入を拒んでいるからだ。ただ放射能が怖いと言う無知から来る身勝手な言い分で、マスコミの垂れ流した風評を真に受けて、自分から勉強もせず大きな声で醜い感情を露わにして反対している人々よ、恥を知れ!!/徳島県の市民は、自分だけ良ければいいって言う人間ばっかりなのか。声を大にして正義を叫ぶ人間はいないのか? 情け無い君たち東京を見習え。」
6 1.がれき受け入れは“必要”か : 「復興支援」=がれき受け入れ?
(1) がれきの実態【図】岩手県11年分、宮城県19年分
7【図】市町村別がれき量
8【図】環境省新聞広告
9・被災3県のがれき撤去率9割に(2011年11月時点) (→ネット画像)
10「県別の撤去率は宮城が99%、岩手は92%で大半のがれきが住宅地や商業地などから仮置き場へ移された。東京電力福島第1原子力発電所事故の影響が強い福島は55%にとどまる。」
11but
「隣接地が仮置き場になっている県立石巻商業高校では夏まで、生徒や教員が粉じんやハエに苦しめられた。目のかゆみや喉の痛みを訴える生徒、肺炎になった生徒もいた」
12「瓦礫を受け入れなかったら被災地の瓦礫処理は2年も3年も遅れる。異臭を放ちハエがブンブン飛んでくることを考えて下さい」(細野豪志環境相、2012年3月18日、川崎市街頭演説)
13but
残りの21箇所は、全て人の住んでいない地域
14 (→資料1左)
15 (→ネット画像)
(2) 広域処理の必要性?・広域処理分は400/2300
「阪神・淡路大震災の瓦礫は2000万トン。東日本大震災は2300万トン。即ち岩手・宮城・福島3県に及ぶ後者は、被災面積当たりの瓦礫(がれき)分量は相対的に少ないのです。」
16※ 阪神・淡路大震災のがれきのうち150万トン弱は県外処理(ほとんど不燃物)
17「瓦礫総量の内、わずか20%の約400万トンを東京やその他の地域で処理する。80%が現地処理。[…]「瓦礫の処理が5%しか進んでいない。これは瓦礫の引き受けが進んでいないから」と2月21日に発表した。しかし、もともと被災地外で処理するのはたったの20%だから、被災地外の引き受けが順調で、もし半分が引き受けても10%の処理率になるに過ぎない。つまり、環境省はこれまでと同じように瓦礫の処理が遅れている理由を、国民が誤解するように発表し、専門家と言われる人はこの辺の事情を十分に知っているのに言わない。新聞も同じである。」
18・域内処理は本当に無理か (→ビデオ)
19「陸前高田市:ご存知の通り、市は全て津波に流されており、街全体に現在も大量の土砂・木材等が各仮置場に山積みとなっております。こうした災害廃棄物が復興の妨げになっており、早期の処理が最大の課題です。皆さまのご理解を得ながら、広域処理をお願いしたいと考えています。」(環境省 広域処理情報サイト)
cf.
「陸前高田市内にがれき処理専門のプラントを作れば、自分たちの判断で今の何倍ものスピードで処理ができると考え、そのことを県に相談したら、門前払いのような形で断られました」(陸前高田市 戸羽太市長)
20 (→資料1 右)
cf.
「東日本大震災で出たがれきの受け入れを進めるため、愛知県は、新たに仮置き場や焼却施設などを1か所に集めた施設の整備を決めました。/愛知県によりますと、受け入れのために施設を新設するのは、全国でも初めてだということです」
21 ・なぜ3年で処理しなければならないのか
「岩泉町では防潮林だった場所に災害廃棄物を仮置きしており、今後、分別破砕をしたうえで処理を行うこととしています。ただし、地域内の災害廃棄物の処理に限界がありますので、広域処理にご協力をお願いしたいと考えております。」(環境省 同前)
cf.
「無理して早く片付けなくてはいけないんだろうか。山にしておいて10年、20年かけて片付けた方が地元に金が落ち、雇用も発生する。/もともと使ってない土地がいっぱいあり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこにあるのか。」(岩手県岩泉町 伊達勝身町長)
22※ ちなみに、稚内に10万トン運ぶと7億円
23・実はいらない
「宮城県は9月15日、同県石巻地区の災害廃棄物処理業務の執行案を県議会の定例会に提出する。委託金額は1923億6000万円。議決を受けてから鹿島を代表とする9社のJV(共同企業体)と契約を締結し、同JVは契約の翌日から2014年3月25日まで、地元の住民を雇用しながらがれきなどを最終処分する予定だ。/業務を進めるに当たっては、地元の住民を1日当たり1250人雇用する。さらに、業務で用いる重機やダンプトラックなどを地元で調達し、従業員に向けて設置する食堂では地元で調達した食材を使う。」
24「県外への受け入れ要請は引き続きやっていくが、予想以上に県内の処理が進んできたため、沿岸部同士でも分散して受け入れる。県外に運ぶよりも経費を抑制でき、放射能汚染を懸念する声も少ないと思う」(宮城県村井嘉浩知事、2012年3月、時事通信インタビュー)
25「阿部市長はこれまで、親交のある宮城県石巻市、多賀城市、岩沼市、南三陸町に受け入れを非公式に打診したが、直接の要望がなかったことを明らかにしたうえで、『もし、(処理を)お願いしますということであれば、やぶさかではない』などと答えた」(山形県酒田市 阿部寿一市長、2012年3月)
26 (3)利権としての広域処理・1トン=6万円
「国はがれき処理に1兆円の助成金予算を組んでいます。がれきを受け入れた自治体は、処理費用を被災県に請求することができます。そして、被災県はそれを国に請求することができるのです。こうして国のがれき処理助成金は最終的に受け入れを行う自治体や業者へと支払われるのです。/実際の支払い金額はどのくらいになるのでしょうか?/下記に静岡県の記事があります[略]。この記事によれば、静岡の自治体に支払われる助成金は、がれき1トン当たり6万6666円です。/この金額は受け入れたがれきを燃やし、焼却灰を埋める費用であって、がれきの送り出し側の選別やサイズをそろえたり、細かく砕いたりといった費用は含まれていません。/受け入れ側は選別の終わった木材を受け取り、燃やして、焼却灰を処分場に埋めるだけです。焼却灰は一般の処分場に埋めていいことになっています。この処理に1トン6万6666円もの助成金が支払われるのです。」
27・東電が儲けて被曝する都民
「東京都による被災地からの汚染がれき受け入れが始まって一週間余り。『国がやらなきゃ東京がやる!』と威勢はいいが、東京都は、公募から契約の手続きだけで1億円強を手数料として抜いた。その“公募”で受注したのは、東電が95.5%出資する子会社『東京臨海リサイクルパワー』で、社長も東電出身の尾中郁夫氏。応募条件を満たす会社は、最初からその一社しかない“ヤラセ受注”で事業規模は2013年度までに計140億円ほどの見通し。その費用は、東電も都も負担せず、国の財政から出る。税金が行政と東電に流し込まれる仕掛けは、これまで繰り返されてきた原発利権ビジネスの構図そのままなのだった。」
28・がれき受け入れ助成4000万 静岡県、新年度予算案に計上(2012年1月26日)
「後援会のホームページに載っている経歴を見ると、『桜井資源株式会社 代表取締役』とある。桜井資源株式会社は産廃処理業者。桜井市長は、元産廃業者の社長だったのだ。そして現社長の桜井洋一氏は息子である。/おまけに彼は、市長就任後、市の廃棄プラスチック処理業務を不正に親族会社に受注させるという事件まで起こしている。/この市長などは、膨大な復興利権の末端でそのおこぼれにあずかる小者といったところだろう。彼が『1トンでも多く受け入れたい』というのはまさに本音」
29 (4) 必要な支援は何か・復興利権にふりまわされるがれき処理 (→資料2)
・トリック
<がれき処理が進まないから復興が進まない>のではなく、むしろ<復興が進まないからがれき処理が進まない>あるいは<復興が進んでいない一つの現れががれき処理の遅れ>であって、<がれき処理が進めば復興が進む>というわけではない。必要な予算措置をとらないことによる復興の遅れをがれき処理の遅れのせいにし、それを広域処理の遅れのせいにし、そしてそれを、受け入れに反対する住民のせいにする。
・2012年3月で高速道路無料化終了
「『今年を復興元年に位置付けていた。なぜ、このタイミングで打ち切るのか』。県の幹部は国の判断に疑問をぶつける。/県は県外避難者の帰還促進、被災地復興を担う物流の支援、観光振興に向けては無料化による交通の利便性向上が不可欠として、継続を求めてきた。/国土交通省は『財源の問題もあり、原発事故で強制的に避難を強いられている人に対象を絞った』と説明する」
30※ 750億円=復興予算総額(一次から三次の補正と12年度予算で、18兆円)の0.4%
31・がれきよりもだいじなこと
「被災地に何度も足を運んでいるが、『がれきがあるから復興が進まない』という話は聞かない。被災地では、住宅再建や雇用の確保、原発事故の補償を求める声が圧倒的だ。がれきは津波被害を受けた沿岸部に積まれるケースが多いが、そこに街を再建するかはまだ決まっていない。高台移転には、沿岸部のがれきは全く障害にならない。がれきが復興の妨げになっているかのような論調は、国民に情緒的な圧力を加えているだけだ」(池田こみち) (→資料3)
「静岡や大阪等の遠隔地が受け入れるべきは『フクシマ』から移住を望む被災者。岩手や宮城から公金投入で運送費とCO2を拡散し、瓦礫を遠隔地へ運ぶのは利権に他ならず。良い意味での地産地消で高台造成に用いるべき」
32 2.がれき受け入れは“安全”か : 「国の基準」を満たせば安心?
(1) どこがどれだけ汚染しているのか・放射能の世界拡散(2011年3月11日〜29日) (→ネット動画)
33※ 気象庁気象研究所:福島原発からの大気中に放出されたセシウム総量は4京(40000,0000,0000,0000)ベクレル(チェルノブイリの2割)、うち3割は陸上に
34・本日の放射能拡散 (→ネット動画)
35 ※ 東電の推定では、1〜3号機からの大気中への放出量は合わせて毎時7,200万ベクレル
(2012年1月22〜28日)
36・東北・関東の放射能汚染地図(2011年12月時点) (→ネット資料)
37※ 24時間×365日=8760倍 → 1万倍すると、/時 を/年に換算できる(多少過大)
例) 0.1μSv/時 は、10を掛けて、単位を一つ上げる → 1 mSv/年 弱
※ 1mSv/年:一般人の被曝上限
※ 50mSv/年&100mSv/5年:原発労働者の被曝上限
※ 1.3mSv/3月 以上、あるいは40,000Bq/m2 以上:放射線管理区域
・地表面へのセシウム沈着量地図(2011年11月発表) (→PC画像)
38・岩手県・宮城県のがれきのセシウム濃度 (→資料4-5)
39・岩手県・宮城県の焼却施設焼却灰のセシウム濃度 (→資料6)
40 (2) 国の基準・ヒロシマ・ナガサキ以来、内部被曝を無視ないし過小評価してきた日米
・240〜480Bq/kg −(焼却)→ 8,000Bq/kg
「作業従事者が受ける年間放射線量であっても、一般公衆の年間線量限度である1ミリシーベルトを下回ります。/また、焼却灰の埋立終了後は、処分場の上部を50cm以上の土で覆うことにより、99.8%の放射線を遮蔽でき、周辺住民への健康に対する影響を無視できるレベル(年間0.01ミリシーベルト以下:日本の平均一人当たりの自然放射線量の100 分の1 以下)に抑えられます」
41・8,000ベクレルって?
※ Bq/kg × 50 = Bq/m2 (土壌を表面から5cm取ったときの概算)
Bq/m2 ÷ 282,000 =μSv
42 → 8,000Bq/kg = 40万Bq/m2 (放射線管理区域の10倍!?)
= 1.4 μSv/時 =14mSv/年
・基準を現実に合わせる
100ベクレル以上は放射性廃棄物(→原発敷地内or六ヶ所村) (→資料7左)
8,000ベクレル以下は埋め立て可
10万ベクレル以下は埋め立て可 (→資料7右)
10万ベクレル以上も埋め立て可
※ cf.) 1mSv/年以上を避難させることにすると福島市なども入るから20mSv/年に
・数百ベクレル/kgのものは空間線量計では測れない
「食品の線量は測れないのかと聞かれますが、測れません。手持ちの機械で感知するほどの線量が出たら、とんでもないことです。大学や専門機関にあるようなしっかりした機械でないと測れません」
43※ 空中線量計はγ線のみ測定(480Bq/kg=0.002μSv/h) (→映像資料)
44※ 「58万円の器械で8,000ベクレルはある程度わかる」(by天神誠)
(3) 自治体の対応・住民の反応・全国 (→資料8)
・徳島県 (→資料9)
・札幌市 (→資料10)
・黒松内町 (→資料11)
・世論調査
「住んでいる自治体で、放射性物質が基準値以下のがれきの受け入れ計画があった場合、『受け入れられる』『どちらかといえば受け入れられる』が計78%に上った」(日本世論調査会)
45 「復興の妨げとなっている、ガレキの処理問題についてお尋ねします。あなたは、自分が住んでいる自治体でのガレキ受け入れについて、どう思いますか。/賛成77.8%、反対17.4%」(フジテレビ「新報道2001」)
46「全国の20代から70代の女性300人に緊急アンケート調査を行った。/その結果、『震災がれきの受け入れに賛成ですか?』という問いに、現時点で『賛成』と答えた割合はわずか28%に留まった。放射能汚染に対する根強い不安感があることがうかがえる。/その一方で、明確に『反対』と答えた割合も18%と少なかった。」(女性セブン2012年3月8日号)
47【図】「がれき処理に地方自治体は積極的に参加すべきだ」YES/NO
48 3.おわりに : 事故責任と放射能を拡散させないために
・「一億総懺悔」?
「政府も、事業者も、あるいは学問の世界においても、安全神話に浸りすぎていたということは総括として言えるだろうと思う。誰の責任というよりも、誰もがその痛みは、責任は共有しなければいけないんだろうと思う」(野田佳彦首相、2012年3月3日、外国プレス会見)
49・「難しい問題ですねぇ」という反応の根拠
「被災地の人たちは、普段の生活ではがれきのことをあまり気に掛けていなくても、全国で『受け入れる、受け入れない』という騒ぎになれば、反対する住民への不信感が募るだろう。受け入れを迫られる住民たちも、本当は被災地をサポートしたいのに信頼できる情報もない中で心の余裕を失う。こうした対立構図をつくっているのは国だ」(池田こみち) (→既出資料3 、12左)
※ 受け入れに賛成すると「放射能!」、反対すると「人でなし!」
広域処理政策がなければこのような対立は生じなかった。逆に言うと、対立構造を生み出すために広域処理政策がとられ、政府による復興の遅れの責任を隠蔽するとともに、福島の危機的状況や原発再稼働問題や東電への責任追及の問題を目立たせないようにしているのかも知れない。また、「広域処理」という本来不要な費用がゼネコンなど大企業にまわるような仕組みを作ったと見ることもできる。
・一応の結論
「安全な瓦礫なら現地に仮設焼却炉を作るほうが経済的で、雇用の面から復興に役立ちます。一方、危険な瓦礫なら、コンクリートで封じ込めるなどの対処法を考えるべきで、遠方に運搬して汚染を拡大するべきではありません。」
50「ガレキどころではない高線量の、日常的な被曝環境で福島の人びと、子どもたちは暮らしている。[…]ガレキ問題にとりくむのと、少なくとも同じ情熱と時間を、福島の子どもたちに向けてほしい。そうでなくては、反原発運動がただの保身になってしまう。」
51★ 全部まとめると「ガレキ広域処理 6つのウソ」 (→資料12右)
52★ ところで、10万トン受け入れたら、稚内市自身のゴミ処理計画はどうなるのでしょう?