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専門学校と就職

事情があって、専門学校(専修学校の専門課程)の就職状況を調べた。

平成15年度経済産業省委託調査『専門学校等における高度専門人材育成』財団法人 政策科学研究所(2004年3月)には「専門学校の高い就職率」という見出しのもとで次のように述べられている。
 大学卒業者の就職率は、かつては8 割を超えていたが、1990 年代以降は下降傾向にある。95年からは6 割台、2000 年からは5 割台に低迷している。2003 年3 月の卒業生も、前年度比1.9ポイント減の55.0%と回復の兆しは見られない。1980 年代までは大学を上回る就職率が売り物であった短期大学も、ほぼ同様の下降線をたどっている。2002 年度の調査では6 割台を回復したが、2003 年度には再び59.7%に下がった。
 一方で、専門学校卒業者の就職率は高率を保っている。大学が6 割台で推移した95 年から98 年調査にかけても8 割台を維持し、99 年以降も7 割台後半を堅持している。2002 年3 月の卒業者の就職率は、前年比1.2 ポイント減とはいえ76.7%と高い。2003 年には、0.4 ポイント増110の77.1%となった。大学と比べ、20 ポイント以上の開きがある。(p.110-111)

つまり、専門学校の就職は大学と比べてかなり好調だ。
大学・短大の成績が下がってしまったものだから、「大学や短期大学を卒業しても、就職ができないためにフリーターとなってしまう若者の増加が社会問題視されている」とまで言う。

しかしこのご時世、「専門学校なら安心だ」ってことでもないだろう。

そこで、卒業までにどのくらいの学生が挫折しているかを調べてみた。上記「就職率」は「全就職者/全卒業者」で算出されているから、卒業生が少ないほどその数字は上がる。かみさんのいた専門学校でも、かなりの学生が2年生に上がれなかったというし。
文部科学省の学校基本調査から、入学者総数と卒業者総数の変遷を見た。

 大  学:599,655人(2000年度)→ 544,894人(2003年度)
              ▲54,761人(9.13%)
 専門学校:326,682人(2002年度)→ 266,820人(2003年度)
              ▲59,862人(18.3%)

つまり、入学者のうち何らかの理由で卒業に至らない学生は専門学校の方が2倍いる。

しかしながら、全入学者に対する全就職者を計算すると、

 大  学:50%
 専門学校:60%

くらいでやはり専門学校の方がいい。
こりゃまずい。

「就職」にもいろいろある。正社員に雇用されるのはやっぱり大卒だろう。
しかし、これがよくわからない。

『AIK Reportダイジェスト』というところに見つけたのが、

 2003年春に高校を卒業し、就労している若者の31.2%がパートとして働いていることが、厚生労働省の03年上半期雇用動向調査で明らかになっ ている。[--]
 高卒以外のパート労働者の割合は、専門学校卒が5.6%、高専・短大卒が3.7%、大卒が5%となっており、高卒の割合が突出していることがわかる。

この数字だと大差ないことになる。

『平成15年度版 国民生活白書』には次の数字。
 内閣府「若年層の意識実態調査」(2003年)によると、最終学歴が高校の人のうち正社員として働いている人の割合は49.1%であるのに対し、専修学校を 卒業して正社員として働いている人の割合は55.7%を占める。

残念ながら、この調査での大卒正社員比率は見つからなかったから比べられない。

数字ではないけれど、『Value Step』には以下の記述があった。
 専門学校卒業者でフリーターというケースは、アートや音楽関係などのクリエイティブ系に多く、資格が取得できる学科では多くが正社員または派遣として定職についているのが普通です。

だそうだ。

新しい生き方基準をつくる会『フツーを生きぬく進路術』(青木書店、2005年)には、
おなじ専門学校と言っても、分野によって就職の実態は大きく異なります。たとえば、医療分野などでは関連分野へ正社員として就職する人が多いのに対し、文化・教養分野においては関連分野に正規社員として就職できる人はあまり多くありません。また、同じ学校でもコース間で就職の実態が大きく異なる場合も多々あります。(p.49)

つまり、専門学校一般ではなく分野ごとに検討しないとリアルなことはわからないということのようだ。

そういえば、看護学校受験のための塾で教えていたときによく聞いたのが、「専門学校なんでしょ? なんで受験勉強なんかするの?」とまわりから言われて困るという生徒の声。
看護専門学校は就職がかなり確実な分、受験も入学後の勉強もたいへんなのだぞ。

他方で、かつて非常勤講師組合に寄せられたある専門学校の事例では、「パソコン」を標榜する学科なのに開講後数ヶ月たっても教室にパソコンが設置されず実習抜きでの座学教育が続いたため、非常勤講師が改善を要求したらクビ、というのがあった。
この上なく、いいかげんである。

今回調べて得られた教訓は、大学・短大・専門学校のいずれであるかという種別で就職状況が決まるものではなく、どういう教育をしているかというそれぞれの学校個別の事情こそが問題なのだということのようだ。

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